横倉先生の独り言

メルマガ、Facebook、noteなどで「今朝の院長の独り言」を綴り、日々の前向きな生き方を発信している横倉院長。かつて日本初の「健康外来」を開設したことで知られ、現クリニックでも「健幸」をテーマに院内でサークル活動を行っています。24年間続けてきた「今朝の院長の独り言」から、選りすぐりの言葉を一冊にまとめ、多くの人に希望や活力を与える書です。

院長の独り言から抜粋

通院していた患者さんに、復職にあたり、配置転換を指示したところ、会社の上司や産業医、人事と面接した途端に、再びうつ状態になり来院してきました。話を聞けば、まさに恫喝とパワハラ、セクハラでした。彼女は3ヶ月前、会社とのトラブルでその会社を飛び出し、街中をさまよってクリニックを3院も巡って、ようやく私のクリニックに偶然巡り着いたようです。会社を飛び出して何処を歩いてきたのかも記憶になかったそうです。患者さんのそんな経緯は知らず、いつもどおりの対応をしていましたが、患者さんが「先生に会えたことが幸運でした」と言ってくれました。当たり前の診療をしただけなのに、患者さんは安心していました。ただ他と違うのは、私が全てを受け入れるという、肯定から始めていることです。

健康外来を始めた頃に受信した男性が。健康志向が強くまさに健康オタクでした。健康に良いものを全て取り入れて、毎日運動をして栄養バランスに気をつけていました。そして検査も正常値にこだわっていましたので、私は彼を「正常値症候群」と診断しました。そして「健康は生きるための手段で、目的ではありません」と話しました。茶道も然りです。多くの茶人が趣味に走り、生き方の美学を忘れます。千利休が茶を極めて美学を伝えようとしたにも関わらず、趣味の茶道になってしまっています。千利休を超えた茶人は未だにいません。

健診や人間ドックで検査しても、健幸度は検査値にも測定値にも出ません。従来の科学が客観性からすべてアプローチしているからです。医療現場では、痛みの強さや性質を測定できません。主観だからです。健幸科学は従来の科学理論を超えた主観です。「元気が出ました」「楽になりました」「ワクワクします」「心地良いです」「スッキリしました」これらも測定ですることができません。健幸づくりは運動や栄養学、医学だけでは、実現不可能なのです。だから益々面白くもあり、同時に困難なのです。

人生50年、60年過ぎると人は疲れてきます。その人達を見ると、あまりに周りに気を遣いすぎています。そして自分を好い人にしてしまっています、もうそろそろ自分を裸にして、さらけ出していい年なのです。

日野原重明先生に「年老いているということが、もし人が始めるという意味を忘却していなければ、本当に輝かしいことである」と言っています。
これは年齢的な問題ではありません。
癌でもその他の病気でも「始める」という言葉を再確認できます。
それも「始める」のではなく「創める」と言っています。
新しいいのちのを与えてもらった今と今まで生きて来た人生とは違います。だから「創める」なのです。
今までの人生でできなかったことを新しいいのちで「創める」のです。
人は2万2000個の遺伝子を両親からもらって生れて来ています。
でもその大部分はいままで使われてきていません。
今までできないと決めつけていたり、気が付かなかっただけです。
先ずは未知な自分の中から見つけて下さい。
これが「創める」ということです。

患者さんに言葉をかけるとき「幸せになりなさい」とよく言っています。
患者さん達は「えっ、それはそうですが…」という答えが多いです。
「幸せになるために生きているのですよ。」
「では、今日から幸せになりましょう。人が喜ぶことをするといいです。家族や友人に。でもその前に、先ずは自分を幸せにしてあげてください。」
「先ず今日は、自分の食べたいもの、好きなものを食べてください。そして家族にも少しあげてください。そうすると、笑顔が生まれます。そして明日は朝から着たいと思う洋服を着てください。仕舞ってあった洋服でも、一張羅の洋服でも着てください。そうすれば、急に具合が悪くなって、病院に運ばれても大丈夫です。そして電車に乗ったら、自分が座る席を探すのではなく、人に譲るための席を先ず確保してください。譲る人が乗ってきたら、席を譲ってあげてください。」
先ずは始めてください。

外来では、ご主人の話、子供の話、仕事の話、世間話、何から何まで話します。実は私の事も話すことが多いです。
ストレスで来院するする方も多いです。仕事、家族、会社、学校など本当に皆さん多かれ少なかれストレスを抱えています。
そんな時、私は患者さんに聞くことがあります。一番大切なものは何ですか。
皆さん、色々なものを挙げますが、私がいつも言う事は
「最も大切なのは、家族、子供でもなく、まずは自分なのですよ。先ずは自分が幸せになること、そうすれば家族も周りの人も幸せになるのです」と。
私自身、家内にはよく言われるのは
「貴方は自分が一番したい事をしているから、絶対に長生きしますよ」と。実は息子からも。

今日、歩いている時の風はどちらから吹いていましたか
雲は流れていましたか
街路樹の葉は何色でしたか
道端に花がありましたか
風を頬で感じていますか
花の香りを今日は感じましたか
空には雲がありましたか
食事は美味しかったですか
空気をいっぱい吐いて吸っていますか
空気がいっぱい身体に入っていますか
今、生きていますか

周りの医者から「先生は患者さんと毎日話していて疲れないですか」とよく言われます。
実は私は、本当に疲れないのです。
毎日クリニックに色々な患者さんが来てくれて、それだけで楽しい。
そして毎日話ができる。
そして患者さんが少しずつ元気になってくれる、そして患者さんの笑顔が見られるようになる。
こんな素晴らしい毎日を過ごせるのも、すべては患者さんのおかげです。
これが私のいのちの使い方です。
医療に携わって、50年してようやく気がつきました。
人生の後半、特にがんステージ3になり、こんなにも人生が面白いものとは気がつきませんでした。
与えられたいのちの使い方も長い間、気づかずに来てしまっていたのです。
これも、がんステージ3になったおかげです。
与えられた新しいいのちです。